『奈良の春を呼ぶ、伝統行事の御菓子』
こんにちは。「毎日が和菓子日和」和菓子ライフナビゲーター、デザイナーの梅の実です。
今回は、古都奈良に伝わる、春の風物詩の御菓子が登場です。
「季節を愉しむ和菓子・春『良弁椿(糊こぼし)』」の由来や販売するお店などをコラムとイラストでご紹介します。
良弁椿(糊こぼし)とは
「良弁椿」とは、奈良・東大寺の開山堂の庭にある椿のことです。
東大寺の開祖である良弁(ろうべん)の像が、開山堂に祀られていることから、「良弁椿(ろうべんつばき)」と呼ばれています。
また、赤に白い糊をこぼしたようなまだら模様の花びらなので、「糊こぼし」や「糊こぼし椿」とも呼ばれるようになりました。
良弁椿(糊こぼし)御菓子の由来
3月初旬から中旬にかけておこなわれる「東大寺二月堂のお水取り」の前、2月の下旬頃に「花ごしらえ」という行事があります。
選ばれた僧侶たちが、黄色の花芯、赤2枚、白3枚の花びらをかたどった和紙を使い、「良弁椿」の造花をつくるのです。(使っている和紙も、市販のものではなく、職人の手染めなのです!)
これを、「東大寺二月堂のお水取り」の間、二月堂のご本尊の四隅に供えます。この僧侶たちにつくられた「良弁椿」の造花こそが、「良弁椿」の和菓子の意匠の由来です。なお、黄色の花芯は、黄味あんでつくられているお店が多いです。
東大寺二月堂のお水取り行事とは
天平勝宝4(752)年から始められ、一度も絶えることなく守り続けられているお水取り。「水取りや瀬々のぬるみも此の日より」と云われ、この行法が過ぎると奈良にも春が来るといわれております。
萬々堂通則さんの「糊こぼし」に添えられていた説明文より引用
1200年以上も前から続いている伝統行事。今、私たちが生きている時間は、その時代から紡がれているのですね。
奈良には紅葉や桜の季節に行くことが多いですが、いつか「お水取り」の時期にも訪れてみたいです。
良弁椿(糊こぼし)の和菓子を食べよう
奈良の和菓子屋さんでは、毎年2月頃から3月中旬の「お水取り」の時期に、「良弁椿」の和菓子がつくられます。
意匠は似ていますが、お店ごとにそれぞれ「お水取り」に因んだ菓銘をつけており、御菓子の味わいも異なります。
まず、今回味わった「萬々堂通則」さんの「糊こぼし」をご紹介します。
萬々堂通則さんの「糊こぼし」のご紹介
味わいひとことメモ
- 華やかな紅白の花弁が美しい
- とてもやわらかく、繊細な御菓子
- 全体的に、甘さを抑えてあるように感じる
- 花芯の黄味あんが、すう・・・っと、口溶ける
- とても品のある御菓子
趣のある、箱や包装紙もとてもステキです。
販売期間
2月上旬~3月中旬
萬々堂通則さんのこと
- 創業:江戸時代末期
- おすすめ銘菓:春日大社の神事でつかわれる「ぶと饅頭」、奈良に伝わる干菓子「青丹よし」
- お店の場所:奈良県奈良市橋本町34
- 最寄駅:近鉄奈良駅
- 萬々堂通則ホームページ
良弁椿(糊こぼし)をつくっているお店
良弁椿(糊こぼし)の和菓子をつくっている、主な和菓子店と菓銘をご紹介します。(順不同)
- 御菓子司 鶴屋徳満
- 銘「開山良弁椿」
- 良弁椿の造花の意匠の御菓子を最初につくったお店
- 明治31年(1898)創業
- 鶴屋徳満ホームページ
- 御菓子司 萬々堂通則
- 銘「糊こぼし」
- 江戸時代末期創業
- 萬々堂通則ホームページ
- 寧楽菓子司 中西与三郎
- 銘「南無寒椿」
- 黄身あん・白小豆粒あんの2種
- 大正2年(1913)創業
- 中西与三郎ホームページ
- 菓匠 千壽庵吉宗
- 銘「二月堂椿」
- 昭和11年(1936年)創業
- 千壽庵吉宗ホームページ
- 千代乃舎 本家竹村
- 銘「御堂椿」
- 元禄14年(1701)創業
- 和洋御菓子司 とらや
- 銘「開山椿」
- 昭和40年(1965)創業
- とらやホームページ
- 御菓子司 萬勝堂
- 銘「修二会の椿」
- 明治23年(1890)創業
- 萬勝堂ホームページ
- 御菓子司 萬林堂
- 銘「参籠椿」
- 昭和39年(1964)創業
- 萬御菓子誂處 樫舎
- 銘「良弁椿」
- 樫舎ホームページ
本来であれば、現地で味わうのが一番ですが、一部のお店では、お取り寄せも可能です。美味しいお茶でもいただきながら、古都の春に想いを馳せてみませんか。
繊細な御菓子を運んでくださる、配送会社さんにも感謝。
和菓子カレンダーと御菓子
そして、こんな愉しみ方も・・・。
毎日が和菓子日和!